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片渕須直監督インタビュー

トークセッション東京国際映画祭 トークセッション

2009年10月22日。東京六本木での東京国際映画祭開催期間中に、『マイマイ新子と千年の魔法』のロケハン(ロケーション・ハンティング)術についてのトークセッションが開催されました。
片渕監督のハード・リサーチャーぶりが発揮された、内容の濃い1時間のセッションの後、山口県FCに時間を頂き、ロケ地マップ用資料の答え合わせとインタビューとなりました。
こちらでもいろいろなお話をしていただきましたがスペースの都合もあり、一部を抜粋してお伝えいたします。
なお、公式ホームページのブログ「カントク片渕のメイキング・オブ・マイマイ新子」でも、製作秘話が楽しめます。

三度防府ロケハンをされたそうですが、ストーリーは先に出来ていたのでしょうか?

昭和30年の話は、ずっと前から「ほぼこんな段取り」というところまで作ってありました。同じ土地の千年前の話がだいたい出来てきたところでロケハンに行きました。ですので、昭和30年と千年前が二重写しになったような感覚を味わいました。
エグゼクティブプロデューサーのお父さんが当時の防府に勤められていたことがあったので、ロケハンの案内をしてもらったのですが、佐波川土手に行った時に「ここは橋から橋の間がずーっと桜並木じゃったのに、ないようになってしもうた(無くなってしまった)」と、おっしゃって。それで僕らの映画では絶対にここに満開の桜並木を再現しようと心に決めました。
実際に上流の方では桜が植樹され始めてましたから、いずれまた昔のように戻って行くと良いですね。

片渕須直監督

映画の中で、お気に入りの場所は?

埋立地の工場の社宅のことはすごく! 工場跡地にはそれ以外にも管理棟とかがまだ残ってたんですが、昭和10年頃から造りはじめられた工場なので、完全に戦前の建築でして、それがものすごく良かったです。あそこで実写映画が撮れそうです。物語を感じさせる場所でした。

他にも行きたかった、行ってみたい場所はありますか?

防府の御舟倉! 3回も防府に行ったのに、なぜか一度も行き着けてないんです(笑)
近くまでは行ってるはずなんだけどなぁ(笑)
(※2009年12月のイベントで実現されました!)

実は山口市にも行ったんですよ。山口サビエル記念聖堂とかを見に。原作には書かれてないんだけど、髙樹先生は山口市に引っ越してるんですよ。他の著書なんか読んでると、山口市がけっこう出て来ます。 (マイマイ新子のアニメ)パート2がもしもあれば、山口が舞台の話かな?

片渕須直監督

実は「もし再び、山口県を舞台にした作品をつくるとしたら?」って質問を用意してたのですけど(笑)
映画は全編山口弁なわけですが、方言を使った演技指導はどうされたのですか?

防府図書館の館長さんが方言の研究をされている方で、全面的に協力していただきました。
全部の台詞を、昭和30年当時の山口弁で読んでもらって、録音して、それをそれぞれの役者さんに渡して、「このイントネーションの通りにしゃべって下さい」と。
福田麻由子くんは、台本読み合わせの前から予習がバッチリで、頭に全部入れてきてました。すごく勉強熱心で、感心しました。

意図したわけではないけど、福田くんをキャスティングした後に「ウチのお父さんは山口出身です」って言い出したんです。音楽のMinako "mooki" Obataさんもご家族が山口県出身で「家族孝行ができた」って喜ばれたり、ほかにも何人かそういうのがあって(笑)
何か不思議な縁があるんですよね、この映画の作り手たちと山口とは。

片渕須直監督

作品について

今回、縁があって山口県防府市が舞台なんですけど、そこには千年前の歴史がある。
でも、千年前の歴史が無い町などないはずなので、いろんな町に映画の舞台になり得る資格がある。
その最初のケースが防府だった。というイメージです。
これを機会に、いろんな土地と連帯できてゆくと良いですよね。例えば、他の国衙があった町だとか。『マイマイ新子と千年の魔法』を見ていただいて、気持ちを共有するような感じが生まれてくるとうれしいですね。

今は次回作「ブラック・ラグーン第3期」の真っ最中だと思いますが。あれも大変なお話ですよね。カラーが随分違うと思うんですけど?

そうですね。
でも、「マイマイ新子」とは裏表のような気がしてるんです。
人が自分の信じるように生きたいっていう気持ちが、報われるか、そうでないか。そのちょっとした分かれ道のこっち側と反対側を描いているだけで、どちらも欠かせないもののように思います。
「ブラック・ラグーン」の暗黒街ロアナプラの住人たちのように、自己実現にたどり着けない、気がついたらその反対側に立ってしまっていた人生のことも忘れてはならない。その上で、「それでも自己実現なるものを信じて頑張りな!」って言いたい子どもたちの世界が確実にある。
それはすごく裏表なんじゃないかなって思ってます。

これからもロケハンはされるんですよね?

しますします!
ロケハンは楽しいですよね(笑)
映画作りの中で一番!(笑)